》とお留守をしていつまでもここにおりましょう。そして兄さんのご決心がとげられるように神様へお祈りをしておりましょう」
優しい妹のこの言葉で決心は一層堅くなった。そこで充分妹のことを老婆に頼んだその後で私は家を出たのであった。孫文元帥の陣中では私は最初旗手であった。しかし間もなく自分から望んで軍事探偵の任務を帯び窃《ひそ》かに北京へ忍び込み讐敵の動静を窺った。袁総統の権勢は飛んでいる鳥を落とすほどで容易に接近出来なかった。それでも私は根気よく彼の身辺を窺《うかが》った。こうして星移り物変り幾星霜が飛び去って行った。果然|王※[#「くさかんむり/奔」、35−7]《おうもう》は頭巾を脱いでその野望をあらわした。袁皇帝と称えようとした。釜で煮られる湯のように中国はにわかに騒ぎ立ち袁討伐の呪いの声が津々浦々にまで鳴り渡った。国民の輿望を一身に負って袁討伐の征皷を四百余の州に響かせたのは孫文先生その人で、漢の代の王※[#「くさかんむり/奔」、35−10]を滅ぼした劉秀がこの世へ現われたかのように、先生の態度は勇ましく先生の人望は目覚ましかった。
その頃私は名を変じ身分を変え、軽奴となって袁総統
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