ない。あいつは民国の仇なのだ! あいつをこのまま放抛《うっちゃ》って置いたらきっと皇帝になるだろう。あんな匹夫を皇帝に戴いて私達は生きていられるかい。あいつは匹夫で姦賊なのだ! 曹操のような人間だ。なんの曹操にも当たらない。あいつはむしろ王※[#「くさかんむり/奔」、34−12]《おうもう》なのだ! 王※[#「くさかんむり/奔」、34−12]を皇帝に戴いた時の漢の天下はどうだったろう? 酷《ひど》い塗炭の苦しみに人民はどんなにもがいたかしれなかった。王※[#「くさかんむり/奔」、34−14]よりももっと袁世凱は匹夫なのだ。その上父母の仇敵だ。私はあいつを討つために革命軍に投じようと思う。どうぞ私を行かせておくれ。私が行ってしまったらお前はきっと寂しいだろう。お前の寂しさを思いやると私の決心は弛むけれど、国の大事には代えられない。たとえ戦に出て行っても時々家へ帰って来よう。そうしてお前を慰めてあげよう。私は決心したのだよ。私を自由にさせておくれ」
 すると妹は微笑して――眼には涙を溜めてはいたが――私の言葉に頷いた。
「私に心配はいりません」妹は優しく云ったものである。「私は老婆《ばあや
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