たらしいが、たしかに彼奴は東洋人だよ。回鶻《ウイグル》人という奴さ」
「回鶻《ウイグル》人ですってあの男が? しかし現代の社会には回鶻《ウイグル》人という奴はいない筈じゃありませんか」
「歴史上では滅びているが、しかしあの通りいるのだよ」
「いったいどこから来たのでしょう?」
「新疆省の羅布《ロブ》の沙漠、羅布湖のある辺の流沙に埋められた昔の都会! そこから彼奴らはやって来たのだ!」
「で、どこへ行くのでしょう?」
「檻を開放しに行くのだよ。猛獣や毒蛇を檻から出して、マドリッドの市中へ追い放し、深夜の市中を騒がすためにね」
「いずれ理由《わけ》があるのでしょうな?」
レザールは髪を掻きむしった。
「理由はつまり復讐だ!」
「マドリッドへ復讐するのですか?」
「マドリッドの住人のある一人が、彼らを憤怒させたからさ」
「どんな悪いことをしたのでしょう? そうしてそれは何者です?」レザールは益※[#二の字点、1−2−22]いらいらした。
「マドリッド市長が彼らの宝の、経文の一部を取ったのだ――つまり発掘したんだね。そこで彼らはその経文を取り返すために出て来たのさ」
「ふうむ」とレザールは呻
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