どもの言葉のうち、簡単な単語だけを知っていたので、最初に行き逢った人猿に向かって、
「焼き肉。食え!」
 と彼らの言葉でまず元気よく云って置いて持って来た燻肉を投げてやった。その人猿は最初のうちは地に落ちている肉の片を審《いぶか》しそうに見ていたが、とうとう片手で取り上げて口へ持って行って噛み付いたが、生肉の味とは似ても似つかぬ微妙な味に驚いたか、その肉片を握ったまま彼の仲間へ飛んで行き、忙がしく何か喋舌り出した。と一斉に人猿どもは私の方へ眼を向けたが爛々と光るその眼に打たれて私は思わず戦慄した。
 次の瞬間には私の周囲《まわり》を幾百という人猿どもが三重にも四重にも取り巻いて、両手を私へ突き出してじっと私を見守っていた。手に持っただけの肉片を彼らの群の中へ投げ込んで置いて、私は恐怖に襲われながら木の上の小屋へ逃げ込んだ。
 私の計画は成功してその時以来人猿どもは私の姿を見掛けさえすれば、両手を前へ突き出して燻肉を請求するのであった。
 ある時私は蔓《つる》で編んだ大きな籠を拵えたがその中へ燻肉を一杯に充たして最初の旅行を企てた。しかし十町と行かないうちに籠の中の肉は悉《ことごと》く尽
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