照らされて拡がっている。そして不幸なダンチョン氏は杭にやっぱり縛られていたが四方には土人の姿もない。
 私は義侠心に揮い立った。
「ダンチョン氏を助けるのはこの機会だ!」
 そこで私は雑草を分けて広場の方へ近寄って行った。しかしその時私の心を他へ振り向けるものがあった。……私の横手の遙か向こうの木立の蔭から女の声が、夢にも忘れない恋人の、紅玉《エルビー》によく似た笑い声がさも楽しそうに聞こえて来た。それに続いて獣の鳴き声がこれも楽しそうに聞こえて来た。
 私は雷にでも打たれたように今いる位置に突っ立ったままその笑い声を聞き澄ました。繰り返し繰り返し女の声と獣の声とは聞こえて来る。どうやら女は獣を相手に戯れてでもいるらしい。
 私は四方へ注意を向け踊る心臓をしっかり抑えて声のする方へ忍び寄った。

        三十二

 明るい満月に照らされて、土人の小屋の裏庭の様子が手に取るように眺められた。霜の降ったように白く見える庭の地面に銀毛を冠った巨大な猩々《しょうじょう》が空に向かって河獺《かわうそ》のように飛んでいる。その猩々をあやすように、両手を軽く打ち合わせているのは白衣を纒った少
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