う。
彼女の姿が綿の木の花でしばらく蔽われて見えなくなった時、私は咄嗟《とっさ》に決心してもと来た方へ走り出した。袁更生の一団が土人部落にいる以上は捕まったが最後私の生命《いのち》は失われるに決まっている。それが恐ろしく思われたからだ。
しかし私の逃げた時は既に機会を失っていた。部落の方から追っかけて来る土人達の叫び声が刻一刻背後の方から聞こえて来る。私は方角を取り違えてただ無茶苦茶に逃げ廻った。突然行手の藪地《ジャングル》の中から支那語の叫び声が聞こえて来た。袁更生の一味の者が先廻りをしていたに相違ない。背後からは土人が追っかけて来る。彼らの持っている槍の穂先が月光にキラキラ光って見え鳥の羽根を飾った兜の峰が雑木の上から覗いて見える。
私は進退きわまった。それからの私というものは無茶というよりも夢中であった。腰の拳銃を抜き出して土人軍に向かって連発した。確かに二、三人射殺したらしい。驚いて逃げ出す土人を見捨てて藪の中へ兎のように潜ぐり込んだ。どこをどのように歩いたものか、ほのぼのと四辺が明るいのでハッと驚いて前方を見ると、何んということだ、眼の前に土人部落の例の広場が篝《ひ》に
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