たのだろうと私は耳を傾けた。その時|遙《はる》か林の方から不思議の叫び声が聞こえて来た。林に住むようになって以来かつて一度も聞いたことのない得体の知れない声である。悪漢に襲われた若い女が必死の場合に上げるような物凄い断末魔の叫び声に似てそれより一層悲しそうな声だ。私は腰掛けから飛び上がって林に向いている銃眼から声のする方を眺めて見た。私の見たものは何んであったろう? 巨大漢《ジャイアント》! 巨大漢! 否|怪物《モンスター》だ! 漆黒の毛に蔽われた身丈《みのたけ》ほとんど八尺もある類人猿《ピテカントロプス》がただ一匹樹枝を雷光のように伝いながら血走る両眼に獲物を見すえ黄色い牙を露出《まるだ》しにしてその牙をガチガチ噛み合わせながらこっちに向かって飛んで来る。彼の著しい特色というのは長い尻尾を持っていることでその尾はちょうど手のように自由の運動《はたらき》をするらしい。すなわちその尾を枝に巻きつけて全身《からだ》の重みを支えるばかりか時にはその尾を振り廻して行手を遮《さえぎ》る雑木を叩くと丈夫の生木さえその一撃で脆《もろ》くも二つに千切れて飛んであたかも鋭い鉞《まさかり》なんどで立ち割っ
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