けようと足跡を手頼《たよ》りに進んで行ったが、林へはいると雑草に蔽われ見出すことが出来なかった。雑草は丈《たけ》延びて身丈《せい》よりも高く林の中は夜のように暗い。喬木はすくすくと空に延し上がり葉と葉は厚く重なり合い数町あるいは数里に渡って緑の天蓋を造っている。太古のままの静けさが森林の中に巣食っている。鳥も啼かず人影もなく風さえ葉の壁に遮《さえぎ》られて林の中までは吹いて来ない。
 自然の厳粛に打ち拉《ひし》がれて私は茫然と立ち尽くした。いったいどうしたらいいのだろう? これから俺はどうしよう? こう思って来て自分ながら恐ろしい運命に戦慄した。

        二十七

 どっちへ行こうかと森林の中を途方に暮れて見廻した時、またも奇蹟が発現《あら》われた。こっちへ来いというように丈なす草が苅り取られ小径が出来ているではないか!
「足跡の主に相違ない」
 私はすぐにこう思った。それで少しも躊躇せずに小径を奥へ歩いて行った。私は幾時間歩いたろう? 体が綿のように疲労《つか》れて来た。私は一歩も進めなくなった。ここでこのまま倒れたなら猛獣毒蛇の恐ろしい牙がすぐにも噛みつくと思いながらどう
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