することも出来なかった。歯朶《しだ》の葉の茂っている地面の上へ私はパッタリ腰を下ろした。すぐに睡眠《ねむり》が襲って来る。私は眠りに落ちたらしい。眠りながら私は手の触覚を体の全体に感じていた。嫋《しなや》かではあるが粗い掌の絶え間ない触覚を感じていた。
どれだけ眠ったか私には一向見当がつかなかった。眼を開いて見ると朝だと見えて厚く重なった葉の天蓋から二筋三筋日光の縞が黄金《きん》線のように射していた。林の中の諸※[#二の字点、1−2−22]の葉は朝風に揺れてさも嬉しそうに上下に舞踏《ダンス》を踊っている。そして私の枕もとには新鮮な果実《このみ》が置かれてある。私は朝飯をそれで済ますと体に勇気が充ちて来た。やおら私は立ち上がって森林の旅を続けようとした。その時何気なく四辺を見ると私のすぐ側の雑草の中に巨大な一匹のボルネオ虎が毒矢に貫かれて死んでいる。私は思わず飛び上がった。身の毛の慄立《よだ》つ思いをしながら死骸の側に彳《たたず》んだ。
「昨夜こいつがこの俺を餌食にしようと襲って来たのを、例の眼に見えない恩人が毒矢で射殺してくれたのだろう」
私の心は感謝の念ではち切れそうに思われた。
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