きの》りとしてずっと前から、南洋へ渡っていたレザール探偵は、ラシイヌ探偵からの電報を見て、ほんとに取る物も取り敢えず、ラシイヌの一行を待ち構えながら滞在していたボルネオの首府の、サンダカンから自動車を走らせ、ラシイヌ達が避難しているここクック村の護謨園《ゴムえん》へ、たった今|到着《つ》いたところであった。
「早速来てくれて有難い」
 疲労の様子などはどこにも見えない相変らず元気のよい言葉つきで、ラシイヌはまず礼を云った。それからラシイヌ一流の事務的の口調で今度の事件の大体の経過を物語った。
「……いずれ詳細《くわし》くは後から云うがラブアン島の沖合まで僕らの船が来た時にだね、突然島蔭から現われて発砲しかけた船がある。船の形は商船だが船首と船尾に一門ずつ大砲の筒口が光っているので海賊船とすぐ知れたよ。大砲を二、三発打ちかけて置いて停まれの信号をしたものさ。逃げようと思っても向こうの船が素晴らしく船脚が速そうだから逃げおおせることが不可能だ。やむを得ず船は停まってしまった。賊船はドンドン近寄って来る。船客達は騒ぎ出す。号泣、怒号、神に祈る声! 愉快な航海が一瞬のうちに修羅の巷と変ったのさ
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