。いずれ海賊と云ったところで黙って穏なしくしてさえいれば命まで取ろうとは云わないだろう。有金財産みんなやったらまさか船は沈めないだろうとこう僕は心で覚悟を決めて、博士やダンチョン君にも意を伝えて静かに甲板へ立ったまま近寄る賊船を見ていたところ、どうも近寄るその賊船に見覚えがあるような気がしたので双眼鏡で眺めたものさ。すると見覚えがある筈だ! 袁更生の一団が黄浦河の上で掠奪した例の和蘭《オランダ》の汽船じゃないか! しまった! と僕は叫んだね。まごまごしてはいられない! みんなの生命《いのち》に関することだ。僕は博士とダンチョン君とマーシャル医学士とを従えて船尾の短艇《ボート》へ走って行った。遁がれるだけは遁がれて見よう。こう思ってみんなを短艇へ乗せてそれを海上へ下ろして置いて僕もそいつへ飛び込んだ。それ漕げ! と、僕の命令と一緒に力任せに漕ぎ出したね。海賊どもはそのうちにこっちの船へ乱れ入ってあらゆる掠奪を行ったあげく暴逆なる撃沈を実行して悠々と引き上げて行ったんだが、天の佐《たす》けというものか僕らの乗っている短艇の姿を彼らは発見しなかったらしい。追撃される心配もなく僕らは短艇を漕ぎ
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