うしたろう? 彼もやっぱり気絶して往来の上に倒れていたが、しかし彼の気絶だけは本当の気絶ではないのであった。彼は不思議の一団が黒い箱を担ぎ出すと見るや否や、彼らの様子を探るため故意《わざ》と彼らに乱打されて地上へ倒れてしまったのであった。で彼は、彼らが立ち去ったと見るや忽然と往来へ立ち上がった。そして一瞬の躊躇もせずダンチョンの側へ駈け寄ったが、危険がないと見て取ると、支那青年の側へ走って行って、その耳もとへ口を当て、「オイ、しっかりせい張教仁!」と大きな声で呼ばわった。そうして青年の手を取ってその脈搏をしらべて見た。脈は幽《かす》かに搏《う》っている。
「まずまずこれも危険はない」
ラシイヌは呟いて立ち上がり、ほんの一瞬考えたが、次の瞬間には足を早めて、黄浦河の方へ走って行った。
黄浦河の岸まで来た時にラシイヌは木蔭に身を隠し、驚異の瞳を輝かせて河中の奇蹟を凝視した。
水面には支那船《サンパン》が浮かんでいる。その甲板には柩のような例の黒箱が置いてある。それを囲んで群像のように彼らの一団が彳《たたず》んでいる。船尾には血のような火光を放す燈火《あかり》が一つ据えてある。彼らは
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