ンパン》が浮いていて、燈火《あかり》も点《つ》けてない船の中で、二、三十の人影がボンヤリとうごめいているのが眼に付いた。ラシイヌの心臓は動悸を打ち、その眼は急に見開らかれた。彼は楊柳の蔭へこっそり姿をひそませて、じっと様子を窺った。船中の唄声はやがて絶えて、また四辺は寂静《ひっそり》となった。すると今度は反対の岸――二百間あまりもかけ隔てた対岸《むこうぎし》の方から幽《かす》かに幽かに同じ唄声が水を渡ってラシイヌの耳へまで聞こえて来た。やがてその詩も途絶えたが、詩の途絶えた方角から、青色の光がただ一点、闇の中へポッツリ浮かび出た。あたかも人魂が迷うようにその青色の|燈の灯《ともしび》は、右に左に静かに動くとまた闇の中へ消えて行った。すると、今度は、彼の足もとの、支那船《サンパン》の中から同じような青色の燈火《あかり》が浮かび出たが、空中で五、六回揺れた後でそのままフッと消え去った。
「フフン、何かの合図だな」
楊柳の蔭でラシイヌは思わずこのように呟いて尚もそのまま彳《たたず》んで、支那船《サンパン》の様子を窺った。
すると支那船は動くともなく、幽かに船体を動かした。闇の河面《かわも
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