、対岸に孤立して立っている董家造船所のドックからは汽罐の音が聞こえて来る。
ラシイヌは河岸を米租界の方へ耳を傾《かし》げながら歩いて行った。そのうちに焼け爛《ただ》れた砲弾のような太陽がグルグル廻りながら、平野の地平《はて》へ没してしまって、間もなく四辺《あたり》は暗くなった。遙か県城の方角に当たって、関門を鎖ざす軋り音が、一日の終りを告げるかのようにさも重々しく響いたが、その音と一緒に諸所の工場から蟻の群でも出るように職工達が現われた。疲労《つか》れた声音で挨拶をしてちりぢりに四方へ散って行く。その後は森然《しん》と静まり返り夜業をすると見えてある工場の、二つの窓から火の光が戸外にカッと洩れて来るのさえかえって寂しく思われた。
四辺《あたり》は森然と静かである。
その時、ラシイヌが歩いている河岸の下の水面から、元気のよい唄声が聞こえて来た。それは、やっぱりあの[#「あの」に傍点]詩である。
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古木天を侵して日已に沈む
…………
…………
巨魁来巨魁来巨魁来
[#ここで字下げ終わり]
ラシイヌはちょっと眉をひそめ、足下の水面をすかして見た。巨大の支那船《サ
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