高島異誌
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)薄縁《うすべり》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)今日|邂逅《おめにかか》った
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)[#底本では「族」が脱字]
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妖僧の一泊
「……ええと、然らば、匁という字じゃ、この文字の意義ご存知かな?」
本条純八はやや得意気に、旧《ふる》い朋友の筒井松太郎へ、斯う改めて訊いて見た。二人は無聊のつれづれから、薄縁《うすべり》を敷いた縁側へ、お互にゴロリと転りながら、先刻から文字の穿鑿《せんさく》に興じ合っているのであった。
「匁という文字の意義でござるか? いやいや拙者不案内でござるよ」
松太郎は指で額を叩き、苦笑しながら左様云った。
「然らばご教授申そうかの――匁と申す此文字はな、何文の目という意義でござるよ。つまり文〆《えみじめ》と書くべきを略して此様に書き申す」
「ははあ、文〆の略字かの。如何様、是は尤じゃ」
「何んと古義通ではござらぬかな」
「天晴古義通、古義通じゃ」
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