五右衛門はポンポンと座を払った。
二人は非常な親友なのであった。
その対照が面白い。
新左衛門は好男子、水の垂れるような美男であった。
それに反して五右衛門は、忍術家だけに矮身で、猪首の皺だらけの醜男であった。
新左衛門は町人出、これに反して五右衛門は、北面の武士の後胤であった。
一人は陽気なお伽衆、然るに、一方は陰険な細作係というのであった。
が、二人には一致点もあった。
「世の中が莫迦に見えて仕方が無い」――と云うのが即ち夫れであった。
そうして夫れが二人の者を、ひどく仲宜くさせたのであった。
「五右衛門」
と新左はニヤニヤしながら「俺は滅法儲けたぜ」
「お前のことだ、儲けもしようさ」五右衛門は茶釜を引き寄せた。
「まあ聞くがいい、耳を嗅いだのさ」
「え、なんだって、耳を嗅いだ? なぜそんなことをしたんだい?」五右衛門も是れには驚いたらしい。
「手段《て》だよ、手段《て》だよ、金儲けのな」
三
「で、誰の耳を嗅いだんだ[#「嗅いだんだ」は底本では「嗅いたんだ」]?」
「殿下の耳を、云う迄もねえ」
「へえ、それで金儲けか?」
「加藤、黒田、浅野、生駒、
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