の振り方。……万事が真剣で緊張していて、見ていても自ずと力が入る。……」
「アッハハ大変ですねえ、お侍さんだけに渡世人と異《ちが》って、物の見方が面白いや。……まあどうかあんなものへは、決してお手を出しませんように」
「いやわし[#「わし」に傍点]はやるつもりだ。今日ははじめてのことであり、駒の張り方さえ解らなったが、一日の見学でよく解った。この次からはわし[#「わし」に傍点]も張るつもりだ」
「いけませんよ杉さん、そいつは不可《いけ》ない。あいつに手を出して味を覚えると、一生涯やめられません。……やればやるほど深みへ入り、財を失い人を悪くし、碌《ろく》なことにはなりません」
「だろうとわし[#「わし」に傍点]も思っている。だからわしはやろうというのだ」
「へー、そいつア変ですねえ」
「わし[#「わし」に傍点]には物事が退屈なのだ。そこで何かしら退屈でない、全身でぶつかって行けるような物に、ぶつかりたいものと思っていたのだ。……博奕、いや結構なものだ。……当分こいつにぶつかって行くつもりで」
「呆れましたな、とんでもない話だ。……秋山先生に知れようものなら、あっしゃアこっぴどく[#「こ
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