は、広言以上に陣十郎の剣法が、物凄いものであることを知り、内心胆を冷やしたが、娘の澄江が仲に入ったため、意外にも陣十郎から勝を譲られた。しかし庄右衛門は考えた。この恐るべき悪剣法者を、このまま屋敷にとめ置いては、我家のためになるまいと。そこでその日茶を飲みながら、それとなく退去を命じてしまった。
 これが陣十郎の身にこたえた。
 彼としては勝をゆずったのであるから、今後は厚遇されるであろう、そうして勝をゆずったのは、澄江が出現したからで、澄江のためにゆずったのである。だから今後はおそらく澄江も、自分に好意を持つだろうと、そんなように考えていたところ、事は全然反対となった。
 そこで小人の退怨《さかうらみ》! そういう次第ならと悪心を亢ぶらせ、翌夜不意に庄右衛門を襲い、寝所でこれを切り斃し、悲鳴に驚いて出て来た澄江を、得たりとばかりに引っ抱え、これも物音に驚いて、出て来た主水をあしらいあしらい、戸外《そと》へ走り出て遁れようとした。
 と、意外な助太刀が出た。
 秋山要介や浪之助であった。
 そこで澄江を手放したあげく、身を持て遁れ行方《ゆくえ》不明となった。
 こうなって見れば主水とし
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