をして、陣十郎は心よげに笑った。
切歯はしたが澄江の命があぶない、要介も主水もかかりかね、足ずりをして躊躇《ためら》った。
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が、その時澄江が叫んだ。
「躊躇はご無用|妾《わたし》を殺して、陣十郎をお討取り下さりませ。……まずこの如く!」と繊手《せんしゅ》を揮った。
「ワッ」と陣十郎が途端に叫び、飛び退くと刀を肩に担ぎ、不覚にも一方へよろめいた。
そこを目掛けて、
「二つになれ!」と、切り込んだは主水の刀であった。
音!
鏘然と一合鳴った。
陣十郎が払ったのである。
と見て取って翻然と、要介は無手で躍りかかった。
剣光!
斜に一流れした。
陣十郎の横なぐりだ。
が、何の要介が、切られてなろうか飛び違った。
そこを二度目に切り込んだ主水!
またも鏘然と音がして、陣十郎の払った刀の、切先が延びて主水の股へ!
「あッ」
主水が地に仆れた。
「お兄様!」と簪《かんざし》を逆手に、それで陣十郎の足の甲を突き、機先を制した澄江が叫び、地を這って主水へ近寄った。
「今は憎さが!」と吼えながら、何という残虐陣十郎は、澄江の背を拝み打ち!
切ろうとした一刹那風を切って、
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