られた恩からでございます……それにいたしましても貴方《あなた》様に――未来の良人のあなた様に、そのようなことを疑われましては、生きて居る望みござりませぬ! 死にます死にます妾は死にます!」
いきなり刀を取って抜いた。
3
主水は仰天して腕を伸ばし、その抜身をもぎ取った。
澄江は畳へ額をつけ、ひた泣きに泣くばかりであった。
抜身を鞘へそっと納め、手の届かない遠くへ押しやり、主水も腕を組んで考え込んだ。
(地獄の苦しみだ)とそう思った。
(こういう苦しみをするというのも、みな水品陣十郎のためだ)
またここへ考えが落ちて行った。
(どうともして早くあいつの居場所を、探り知って討ち取りたいものだ)
(旅用の金も残り少なになった)
このことも随分辛いのであった。
胸は苦しく頭痛さえして来た。
不意に主水は立ち上り、障子をあけ、雨戸をあけ、縁に立って戸外を見た。
一跨ぎにも足りない竹垣をへだて、向かいはずっと田畑であり、月の光が農作物の上に、水銀のように照っていた。
でも一方右手の方には、逸見《へんみ》三家中の名古屋逸見家の、大旗本の下屋敷のような、宏大な屋敷の一部が、黒く厳
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