。
(澄江が水品陣十郎と、寝泊りをして旅をして来たとは!)
このことが気鬱の原因であった。
互いに過去の話をした時、このことを澄江は主水に話し、寝泊りして旅こそして来たが、躰に――貞操には欠けるところがないと、このことについては力説した。そこで主水もお妻と一緒に、寝泊りをして旅をして来たことを、きわめて率直に打ちあけて、そうしてやはり肉体的には、なんら欠点のないということを、澄江が安心するように話した。
艱難辛苦をしたあげく、久しぶりで逢った主水と澄江とは、その邂逅に歓喜して、疑わしい過去のそういう生活をも、疑うことなく許し合った。
が、その歓喜がやがて消えて、平静の生活に返って来ると、相互にこのことが疑われ出した。
二人は兄妹とはいうものの、行く行くは夫婦になるべきところの、義兄妹であり許婚《いいなずけ》であった。
そうして水品陣十郎が、父庄右衛門を殺害《さつがい》したのは、澄江に横恋慕した結果からのはずだ。
その陣十郎と二人だけで、寝泊りして旅をして来たという!
主水は苦悶せざるを得なかった。
2
主水が苦悶すると同じように、澄江も苦悶せざるを得なかった。
(あ
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