て秋が訪れて来た。
御三家の筆頭尾張家の城下、名古屋の町にも桜の葉などが風に誘われて散るようになった。
この頃知行一万石、石河原《いしかわら》東市正のお屋敷において月見の宴が催され、家中の重臣や若侍が、そのお屋敷に招かれていた。
竹腰但馬、渡辺半左衛門、平岩|図書《ずしょ》、成瀬|監物《けんもつ》、等々の高禄の武士たちは、主人東市正と同席し、まことに上品におとなしく昔話などに興じていたが、若侍たちは若侍たちで、少し離れた別の座敷であたかも無礼講の有様で、高笑、放談、自慢話――女の話、妖怪変化の話、勝負事の話などに興じていた。
と佐伯勘六という二十八九歳の侍が、
「辻斬の噂をお聞きかな」と、一座を見廻して云い出した。
月見の宴で
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「辻斬の噂、どんな辻斬で?」と前田主膳という武士が訊いた。
「撞木杖をついた跛者《びっこ》の武士が辻斬りをするということで厶《ござ》るが」
「その噂なら存じて居ります」
「不思議な太刀使いをするそうで」
「こうヒョイと車に返し、すぐにドッと胴輪切りにかける――ということでありますそうで」
この話はこれで終ってしまった。
盃が廻り銚子が運ばれ、
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