の屋敷に、滞在いたして居りましたところ……」
「これはこれは不思議なことで、拙者も井上嘉門殿の屋敷に滞在いたして居りましたので……」
「や、さようで、一向存ぜず、彼の地にて御面会いたすこと出来ず、残念至極に存じ申す」
「しかるに今回の騒動! そこで引揚げて参りましたので」
「実は拙者も同様でござる」
 この時嘉門は駕籠から出て、改めて要介へ挨拶をした。
「ここに居りましても致し方ござらぬ、ともかくも福島まで引揚げましょう」
 こう多四郎が云ったので、一同それに同意した。

 一同がこの地から立ち去った後は、またこの地はひとしきり、深い林と月光との、無人の静かな境地となっていた。
 しかし岩陰には陣十郎が負傷に苦しんで呻いていた。
 大岩の陰にいたために、多四郎にも要介にも見あらわされず、そのことは幸福に感じられたが、お妻や源女を見かけながら、どうにもすることが出来なかったことは、彼には残念に思われた。
「ここに居ても仕方がない」
 こう思って彼は立ち上った。
「痛い! 痛い! 痛い!」と声をあげ、陣十郎はすぐに仆れ、右の足の膝の辺りを抑えた。
「あッ……膝の骨が砕けて居るわ」

 やが
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