んかな」
「こりゃア驚いた、どうして知ってる?」
「たった今お渡りになりまして、同じようなことを仰有《おっしゃ》いましたので」
「さすがは猪之松、先へ渡ったか、こいつはどうも恐れ入った。……じゃア爺《とっ》つあんこうしてくんな。俺か猪之松かどっちか一人、間もなく宿の方へ帰るから、向こう岸へ帰らずに船をとめて、ここの岸で待っていてくんな」
「へい、よろしゅうございます……が、お一人だけお帰りになるので?」
「そうさ、一人だけ帰るのよ。もう一人は遠い旅へ出るんだ。……行って帰らぬ旅ってやつへな」
云いすてて林蔵は先へ進んだ。
と、雑木の林の中から、
「赤尾のか、待っていた」という、猪之松の声が聞こえてきた。
「高萩のか、遅れて悪かった」
「俺もいまし方来たばかりよ」
木洩れの月光の明るい所で、二人は顔を向かい合わせた。
「さて高萩の」と林蔵は云った。
「三度目の決闘だ、今度こそかた[#「かた」に傍点]をつけようぜ」
「うん、俺もそのつもりだ。……最初は上尾の街道で、二度目は追分の宿外れの野原で、三度目はこの黒川渡で……」
「今度こそかた[#「かた」に傍点]がつきそうだ」
「三度目の定
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