く
形は本来地水火じゃ
三所に移り元に帰し
命はあれど形はない
[#ここで字下げ終わり]
それはこういう歌であった。
「お爺さん」と澄江は云った。
「あの歌、何でございますの?」
「誰も彼もうたう歌なのじゃ、……この辺りではちっとも珍らしくない。……所在ないからうたうのさ……ずっと昔からある歌で、意味もなんにもないのだろうよ」
「この岩窟深いのでしょうか?」
「深いそうだ、深いそうだ。が誰もが行ったものはない。行ったものがないということだ。……わしだけは相当奥まで行った。だが中途で引っ返してしまった。……恐ろしいと云おうか凄いと云おうか、あらたかと云おうか何と云おうか、どうにも変な気持がして、とうとう引返してしまったのさ。……人柱が立っているんだからなア……骸骨なんだ、本当の骸骨! ……そっくり原形を保っている奴だ。そいつが岸壁の右にも左にも、ズラリと並んでいやがるじゃアないか」
悪人還元
1
陣十郎は黙々として、山路に向かって歩いていた。
後から主水が従《つ》いて行ったが、これも黙々として物を云わなかった。
嘉門の大屋敷の構内から出、あて[#「あて」に傍点]なしに歩いて行
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