出来ないのだがなア」
「とても俺には出来そうもないよ。『逆ノ車』を破るなんてことは」
「それでは俺を討たぬつもりか」
「きっと討つ! 必ず討つ!」
主水は烈しい声で云い、鋭い眼で陣十郎を睨んだ。
それを陣十郎は見返しながら、
「討てよ、な、必ず討て! 俺もお前に討たれるつもりだ。……が、それには『逆ノ車』を……」
主水は俯向いて溜息をした。
二人はしばらく黙っていた。
森の外の明るい峠道を、二三人の旅人が通って行き、駄賃馬の附けた鈴の音が、幽かながらも聞こえてきた。
「『逆ノ車』使って見せてやろうか」
ややあって陣十郎はこう云った。
「うむ、兎も角も使って見せてくれ」
「立ちな。そうして刀を構えな」
云い云い陣十郎は立ち上った。
そこで主水も立ち上り、云われるままに刀を構えた。
と、陣十郎も納めた刀を、又もソロリと引き抜いたが、やがて静かに中段につけた。
5
「よいか」と陣十郎が云った途端、陣十郎の刀が左斜に、さながら水でも引くように、静かに、流暢に、しかし粘って、惑わすかのようにスーッと引かれた。
何たる誘惑それを見ると、引かれまい、出まいと思いながら、その切先
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