?」
「悪い、駄目だ、起きられぬ」
 床を敷かせ、枕に就き、幽かに唸っていた陣十郎は、そう云って残念そうに歯を噛んだ。
「これではお前と立ち合い出来ぬよ」


「まあ可《い》い、ゆっくり養生するさ」
 主水はそう云って気の毒そうに見た。
「快癒してから立ち合おう」
「それよりどうだな」と陣十郎は云った。
「こういう俺を討って取らぬか」
「そういうお前を討つ程なら、あの時とうに討って居るよ」
「あの時討てばよかったものを」
「死人を切ると同じだったからな」
「それでも討てば敵討《かたきうち》にはなった」
「誉にならぬ敵討か」
「ナーニ見事に立ち合いまして、討って取りましたと云ったところで、誰一人疑う者はなく、誉ある復讐ということになり、立身出世疑いなしじゃ」
「心が許さぬよ、俺の良心が」
「なるほどな、それはそうだろう。……そういう良心的のお前だからな」
「お前という人間も一緒に住んで見ると、意外に良心的の人間なので、俺は少し驚いている」
「ナーニ俺は悪人だよ」
「悪人には相違ないさ。が、悪人の心の底に、一点強い善心がある。――とそんなように思われるのさ」
「そうかなア、そうかもしれぬ
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