郎が泊っていたが、この人は地味で温厚だったので、名札も立てさせずひっそりとしていた。
さて馬市の当日となった。
博労、市人、見物の群、馬を買う人、馬を売る人、香具師《やし》の男女、貸元衆や乾児、非常を警める宿役人、関所の武士達、旅の男女――人、人、人で宿《しゅく》は埋もれ、家々の門や往来には、売られる馬が無数に繋がれ、嘶《いなな》き、地を蹴り、噛み合い刎ね合い、それを見て犬が吠え――、声、声、声で騒がしくおりから好天気で日射し明るく、見世物小屋も入りが多く、賭場も盛って賑やかであった。
そういう福島の繁盛を外に、かなり距たった奈良井の宿の、山形屋という旅籠屋へ、辿りついた二人の武士があった。
陣十郎と主水であった。
奥の小広い部屋を二つ、隣同志に取って泊まった。
二人ながら駕籠で来たのであったが、駕籠から現われた陣十郎を見て、
「こいつは飛んだお客様だ」と、宿の者がヒヤリとした程に、陣十郎は憔悴してい、手足に幾所か繃帯さえし、病人であり、怪我人であることを、むごたらしく鮮やかに示していた。
夕食の膳を引かしてから、主水は陣十郎の部屋へ行った。
「どうだ陣十郎、気分はどうだ
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