から、親分に決闘《はたしあい》を申し込んだはず。今度はこっちから申し込んだ方が」
「嘉門様がお居でなさらあ。……素人の客人を護衛《まも》って行く俺らだ、喧嘩は不可《いけ》ねえ、解ったろうな」
「なるほどなア、こいつア理屈だ。……じゃア静まって居りやしょう」
この時二人の旅姿の武士と、同じく一人の旅姿の女、三人連れが火事の光に、あざやかに姿を照らしながら、宿の方から野へ現われ、猪之松方へ歩いて来た。
眼ざとく認めたのが要介であった。
「杉氏」と要介は声をかけた。
「あの武家をよくご覧」
浪之助は見やったが、
「先生ありゃア逸見先生で」
「であろうな、わしもそう見た」
「先生、女は源女さんですよ」
「そうらしい、わしもそうと見た。……よし」と云うと秋山要介[#「要介」は底本では「要助」]、つかつか進み出て声をかけた。
「あいやそこへまいられたは、逸見多四郎先生と存ずる。しばらくお待ち下されい」
さようその武士は本陣油屋から、人波を分け放馬を避け、源女と東馬とを従えて、野へ遁れ出た多四郎であったが、呼ばれて足を止め振り返った。
8
「これはこれは秋山先生か」
こう云ったが逸見多四
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