った、旅籠を抜け出して道を歩き、鍵屋などへは行けなかった。
 行けたにしても時が経ち、用達しの時間よりも遅れたならば、そうでなくてさえ常始終から、逃げはしないかと警戒しているお妻が、不安に思って探しに来、居ないと知ったら騒ぎ立て、一悶着起こそうもしれない。そうなっては大変である。
 そこで主水は厠へ入り、やがて出て来て部屋へ帰り、穏しく又夜具の中へ入った。
 見ればお妻は同じ姿勢で、安らかに眠っているようであった。
 やはり主水には澄江のことが、どうにも気になってならなかった。
(よし、もう一度試みてみよう)
 で、お妻の方へ眼をやったまま、又ソヨリと夜具から出た。
 お妻はやはり眠っていた。
 衣裳や両刀の置いてある方へ行った。
 幸いにお妻は眼をさまさなかった。
(有難い)と心で呟き、手早く衣裳を着換えようとした時、
「主水様どちらへ?」とお妻が云った。
 眼をさましていたのであった。
 怒ったような、嘲るような、――妾を出し抜いて行こうとなされても、出し抜かれるものではござんせん――こう云ってでもいるような眼付で、お妻は主水をじっと見詰めた。
「いや……ナニ、ちょっと……それにし
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