ば、俚謡《うた》に詠まれている関所があり、更に一方へ辿って行けば、沓掛《くつかけ》の古風の駅《うまやじ》があった。
旅籠には飯盛、青樓《ちゃや》にはさぼし[#「さぼし」に傍点]、そういう名称の遊女がいて、
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後供《あとども》は霞ひくなり加賀守《かがのかみ》
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加賀金沢百万石の大名、前田侯などお通りの節には、行列蜿蜒数里に渡り、その後供など霞むほどであったが、この追分には必ず泊まり、泊まれば宿中の遊女という遊女は召されて纏頭《はな》をいただいた。
そういう追分の鍵屋という旅籠へ、陣十郎と澄江が泊まったのは、
「お泊まりなんし、お泊まりなんし、銭が安うて飯《おまんま》が旨うて、夜具《やぐ》が可《よ》うてお給仕が別嬪、某屋《なにや》はここじゃお泊まりなんし」と、旅人を呼び立て袖を引く、留女《とめおんな》の声のかまびすしい、雀色の黄昏《たそがれ》であった。表へ向いた二階へ通された。
旅装を解き少しくつろぎ、それから障子を細目に開けて、澄江は往来の様子を眺めた。駕籠が行き駄賃馬が通り、旅人の群が後から後から、陸続として通って行き、鈴の音、馬子
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