」と澄江は編笠の中から、これも優しい声で答えた。

心々の旅の人々


「お疲労でござらば駕籠雇いましょう」
 陣十郎も編笠の中から、念を押すようにもう一度云った。いかにも優しい声であった。
「何の遠慮などいたしましょう、疲労ましたら妾の方から、駕籠なと馬なとお雇い下されと、押してお頼みいたします……どうやらそう仰言《おっしゃ》る貴郎様こそ、お疲労のご様子でございますのね。ご遠慮なく馬になと駕籠になと、ホ、ホ、ホ、お召しなさりませ」
 からかう[#「からかう」に傍点]ように澄江は云った。
「ア、ハ、ハ、とんでもない話で、拙者と来ては十里二十里、韋駄天のように走りましたところでビクともする足ではござりませぬ。……貴女は女無理して歩いて、さて旅籠《はたご》へ着いてから、ソレ按摩じゃ、ヤレ灸《やいと》じゃと、泣顔をして騒がれても、拙者決して取り合いませぬぞ」
「貴郎様こそ旅籠に着かれてから、くるぶし[#「くるぶし」に傍点]が痛めるの肩が凝るのと、苦情めいたこと仰せられましても、妾取り合わぬでござりましょうよ。ホ、ホ、ホ」と朗かに笑った。
 陣十郎も朗かに笑った。
 これは何たることであろう
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