々も気づいたかして、雨戸を開け五人十人、二十人となく駈け出し走り出し、提燈、松明を振り照らし、その火の光に獲物々々を、――槍、鉄砲、半弓までひっさげ、しごき、振り廻し狙っている、――そういう姿をさえ照らしていた。
 しかしこの頃覆面武士は、とうに土塀を乗り越えて、高萩村を野良の方へ外れ、淡い月光を肩に受け、野を巻いている霧を分け、足にまつわる露草を蹴り、小脇に澄江をいとし[#「いとし」に傍点]そうに抱え、刀も既に鞘に納め、ただひたすらに走っていた。
 その武士は水品陣十郎であった。

 それから十日ほど日が経った。
 陣十郎と澄江との二人が、旅姿に身をよそおい、外見からすれば仲のよい夫婦、それでなかったら仲のよい兄妹、それかのような様子をして、木曽街道を辿っていた。
 初秋の木曽街道の美しさ、萩が乱れ咲き柿の実が色づき、渡鳥が群れ来て飛びつれて啼き、晴れた碧空を千切れた雲が、折々日を掠めて漂う影が、在郷馬や駕籠かきによって、軽い塵埃を揚げられる街道へ、時々|陰影《かげ》を落としたりした。
「澄江殿、お疲労《つかれ》かな?」
 優しい声でいたわるように、こう陣十郎は声をかけた。
「いいえ
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