「やっとこさ」に傍点]、身が守られるというものだ! ……酒だ! くれ! 冷で一杯!」
ソロリと刀を鞘に納め、片手をヌッと差し出したが、ヒョイとその手を引っこませると、フラリとばかりに框《かまち》を上った。
「飲むならいっそ奥で飲もう。馬大尽様の御前でよ。陽気で明るい座敷でよ。親分にもしばらくご無沙汰した。お目にかかって申訳……退け、邪魔だ!」
ヒョロリヒョロリと、乾分達の間を分け、奥の方へ歩いて行った。
後を見送って乾児達は、しばらくの間は黙っていた。
と不意に閂峰吉が、
「八五郎の奴どうしたかなあ」と、あらぬ方へ話を持って行った。
陣十郎の影口をうっかり利いて、立聞きでもされたら一大事、又抜身を振り廻されるかもしれない。障《さ》わるな障わるなという心持から、話をあらぬ方へ反らせたのであった。
一同《みんな》はホッと息を吐いた。
「先刻《さっき》ヒョッコリ面を出して、馬大尽様にもうち[#「うち」に傍点]の親分にも、お気に入るような素晴らしい、献上物を持って来るんだと、大変もねえ自慢を云って、はしゃいで[#「はしゃいで」に傍点]素っ飛んで行きゃアがったが、それっきりいまだ面ア
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