婚の、お噂ばかり不愍とやら、探そうとやら何とやら、お気の強いことでございます」
 グッと手を延ばすと膝の前にあった、冷えた渋茶の茶碗を取り、一口に飲んでカチリと置いた。
「妾の心もご存知なく!」
 西陽が障子に射していて、時々そこへ鳥影がさした。
 生垣の向こう、手近の野良で、耕しながらの娘であろう、野良歌うたうのが聞こえてきた。
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※[#歌記号、1−3−28]|背戸《せと》を出たればナー
よいお月夜で
様《さま》の頬冠《ほおかむ》ナー
白々と
[#ここで字下げ終わり]
 二人はしばらく黙っていた。
 と、不意に怨ずるように、お妻が熱のある声で云った。
「ただに酔興で貴郎様を、何であの時お助けしましょうぞ。……その後もここにお隠匿《かくま》いし、何の酔興でご介抱しましょう。……心に想いがあるからでござんす」


 主水は当惑と多少の不快、そういう感情をチラリと見せた。
 が、お妻はそんなようにされても、手を引くような女ではなく、
「あの際お助けしなかろうものなら、陣十郎が立ち戻り、正気を失っている貴郎様を、討ち取ったことでござりましょうよ。……恩にかけるではござ
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