追われて後へ退く多四郎!
 ドドドドッという二人の足音!
 見よ、その速さ、その鋭さ!
 あッ、多四郎は道場の端、板壁へまで追い詰められ、背中を板壁へあてたまま、もう退けない立ち縮んだ。
 その正面へ宛然《さながら》巨岩、立ちふさがったは要介であった。
 勝負あった!
 勝ちは要介!
 非ず、見よ、次の瞬間、多四郎の胸大きく波打ち、双肩渦高く盛り上ると見るや、ヌッと一足前へ出た。
 と、一足要介は下った。
 多四郎は二足ヌッと出た。
 要介は退いた。
 全く同じだ!
 ドドドドッという足音!
 突き進むは多四郎、退くは要介、たちまちにして形勢は一変し、今は要介押し返され、道場の破目板を背に負った。
 で、静止!
 しばらくの間!
 二本の剣が――木刀が、空を細かく細かく細かく、細かく細かく刻んでいる。
 多四郎勝ちか?
 追い詰め了《りょう》したか?
 否!
 ソロリと一足下った。
 追って要介が一足出た。
 粘りつ、ゆっくりと、鷺足さながら、ソロリ、ソロリ、ソロリ、ソロリと、二人は道場の中央まで出て来た。
 何ぞ変らざる姿勢と形勢と!
 全く以前と同じように、二人中段に構えたまま
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