眠りなさりませ。今夜が過ぎて明日にでもなったら、効験が現われるでござりましょう。……それでは妾《わたし》は他のお部屋の、他の女の人達を、見廻って来ることにいたしましょう」
 六十あまりの老婆である、脂肪肥りに肥っている。胡麻塩の髪の毛、刺のような鼻、おち窪んだ眼、皮肉な口、それが老婆の風采である。
 部屋の朦朧とした光に照らされ、妖怪じみて立っている。
 その部屋の様の艶妖なことよ! そうして異国じみていることよ!
 部屋の一所に浴槽があって、淡黄色の清らかな湯が、滑石の浴槽の縁をあふれて、床へダブダブとこぼれている。その傍らの壁の高所《たかみ》に、銀製の漏斗《じょうご》型の管があって、そこから香水の霧|水沫《しぶき》が、絶間なく部屋へ吹き出している。が、浴槽は呂宋《ルソン》織りらしい、男女痴遊の浮模様のある、垂布《タピー》の向う側にあるところから、ハッキリ見ることは出来なかった。更に部屋の一所に、一人寝の寝台が置いてあった。張られてあるのは天鵞※[#「糸+戊」、510−下−23]《びろうど》であって、深紅の色をなしていた。が、尋常の寝台ではなく、一度その中へ寝ようものなら、リズムをも
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