ばすかも知れませぬが、何の何の太閤様が、そのようなお腹の小さいことを、どうしてお企てなさりましょう。そのご心配には及びませぬよ……」
と、ここまで云って来て幸蔵主は、繊細微妙な笑い方をしたが、
「お疑いさえ晴れましたら、貴郎様には直ぐにもご帰洛、ここ聚楽第の主として、いぜんとして一ノ人関白職、どのような栄華にでも耽けられます」
この言葉が何よりも秀次の心を、強く烈しく打ったようであった。
「幸蔵主の姥!」とじっと[#「じっと」に傍点]なったが、
「伏見へ参ってお詫びさえしたら、俺は聚楽へ帰られようかな? 現在の位置に居られようかな?」
「妾をお信じなさりませ。孫七郎様の昔から、膝へ掻き上げてご介抱をした、この幸蔵主ではござりませぬか。今はお偉い関白様でも、妾の眼から見ますれば、可愛らしい和兒《わこ》様でござります。そういう可愛らしい和兒様に何で嘘など申しましょう」
「行こう行こう、伏見へ行こう!」
子供のように他愛なく、こう秀次は甘えるように云った。
「俺にもお前は懐かしい。母者人《ははじゃびと》のような気持がする。俺はお前の云う通りになろう」
「ようご決心なされました」
「伏見
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