、血相を変えた女がある。他ならぬ愛妾葛葉の方で、かばう[#「かばう」に傍点]ように千浪を蔽うたが、
「許しておやり遊ばしませ。まだこの子はほんの[#「ほんの」に傍点]処女《おぼこ》で、可哀そうな子にござります」
しかし葛葉の顔にあるものは、決して同情や愛憐ではなくて、むしろ自分の寵愛を、侍女《こしもと》の千浪に横取られることを、恐れて案じているところの、妾《めかけ》らしい嫉妬の情であった。
「ナニ処女、ははあそうか」
秀次はカラカラと笑ったが、
「一層よいの、処女に限る。……其方《そち》は幾年《いくつ》だ? 二十九だったかな。年から云っても盛りは過ぎた。もう俺には興味はない。……代りに千浪をよこすがよい」
秀次はなおもヒョロヒョロと進む。
あれ! というように声を上げて、千浪が立って逃げ出したところを、飛びかかって秀次は小脇に抱いた。
「もがけもがけ、あばれろあばれろ、そのつどお前の軟かい肌が、俺の体へぶつかるばかりだ! 小鳥よ、捕らえた! 可愛い色鳥!」
ズルズルと引き立てて行こうとした。
その秀次の両の足を、しっかりと抱いた者があった。やはり葛葉の方である。
冷やかに
前へ
次へ
全79ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング