[#「しんみり」に傍点]と、囁くような声で語り出した。
「その移住して来た人々が、高麗の国から持って来た宝を、荏原屋敷で保管して、代々伝えたということも、お姉様にはご存知ですわねえ。……でも、その宝物は長い年月の間に、持ち出されて使い果たされ、尋常の人間の智慧ぐらいでは、絶対に発見することの出来ない、宝物の隠匿《かくし》場所ばかりが、今も荏原屋敷のどこかにあるという、そういうこともお姉様には、伝説として聞いて知っていますわねえ。……ところが……」と云って来てあやめ[#「あやめ」に傍点]の両手を、お葉はひし[#「ひし」に傍点]と握りしめ、一層声を落として云った。
「ところが今から百五十年前、元禄年間に大財産が、その隠匿所へこっそりと、仕舞い込まれたということですの」
「まあ」とあやめ[#「あやめ」に傍点]も唾を呑み、握られている手を握り返したが、
「どういう財産? どういう素性の?」
「浪速《なにわ》の豪商淀屋辰五郎が、闕所《けっしょ》になる前に家財の大半を、こっそり隠したということですが、その財産だということですの」
「まあ淀屋の? 淀辰のねえ」
「それをどうして知ったものか、松浦頼母
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