、主馬之進と密談いたしましたり、主馬之進と一緒に屋敷内を、そここことなく探したりしました。探った結果その武士こそ、主馬之進の実の兄の、田安家の奥家老、松浦頼母だと知りました」
「知らなかった、わたしは! まるで知らなかった! ……でもどうしてそんな立派な、田安中納言様の奥家老が、実の弟を荏原屋敷へ入れたり、自身微行して訪ねて行ったり?」
「慾からですお姉様、慾からです! ……それも大きな慾から! ……」

   荏原屋敷の秘密

 どこから話したらよかろうかと、思案するかのようにお葉は黙って、あやめ[#「あやめ」に傍点]の顔を見守った。
 姉妹《きょうだい》二人が抱き合った時、お葉の肩から飛び下りた小猿は――藤八猿は築山の頂きに、赤いちゃんちゃんこ[#「ちゃんちゃんこ」に傍点]を着て置物のように坐り、姉妹の姿を見下ろしている。
「高麗郡の高麗家と同じように、荏原郡の荏原屋敷が、天智天皇様のご治世に、高麗の国から移住して来た人々の、その首領《おかしら》を先祖にして、今日まで連綿と続いて来た、そういう屋敷だということは、お姉様《あねえさま》もご存知でございますわねえ」とやがてお葉はしんみり
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