、どうしてここへは※[#感嘆符疑問符、1−8−78] おおそうしてその有様は※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
お八重は顔をわずかに上げた。起きられないほど弱っているらしい。こっちの部屋から襖の間《あい》を通して、射し込んで行く幽かな燈の光に、蛾のように白いお八重の顔が、鬢を顫わせているのが見えた。猿轡をはめられている口であった。物云うことは出来なかった。
「お八重さんばっかりに眼をとられて、あっしを見ねえとは阿漕《あこぎ》ですねえ」
胡座から立て膝に直ったかと思うと、こう勘兵衛が冷嘲《ひやか》すように云った。
「見忘れたんでもござんすまいに」
「わりゃア勘兵衛!」と主税は叫んだ。
「死んだはずの勘兵衛が!」
「いかにも殺されたはずの勘兵衛で、へへへ!」と白い歯を見せ、
「あの時あっしア確かにみっしり[#「みっしり」に傍点]、締め殺されたようでござんすねえ。……殺そうとした奴ア解《わか》っていまさア。‥…あやめ[#「あやめ」に傍点]の阿魔《あま》に相違ねえんで。……あの阿魔以前からあっしの命を、取ろう取ろうとしていたんですからねえ。……取られる理由《わけ》もあるんですから、まあま
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