鳴などが、いよいよ烈しく聞こえてはきたが、頼母ばかりはなお門口に立っていた。
するとその時老人の声が、どこからともなく聞こえてきた。しかもそれは歌声であった。
(はてな?)と頼母は聞き耳を立てた。
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※[#歌記号、1−3−28]真昼頃、見る日は南、背後《うしろ》北、左は東、右は西なり
[#ここで字下げ終わり]
歌の文句はこうであった。
そうしてその歌声は林の奥の、古沼の方から聞こえてくる。
「見る日は南と云ったようだな」と頼母は思わず声に出して云った。
(見る日は南というこの言葉は、独楽の隠語の中に有ったはずだ。その言葉を詠み込んだ歌を歌うからには、その歌の意味を知っていなければならない)
頼母は歌の聞こえた方へ、足を空にして走って行った。
歌の主を引っ捕らえ、歌の意味を質《ただ》そうと思ったからである。
歌声は林に囲繞された大古沼の方から聞こえてきた。
頼母は林の中へ走り込んだ。
でも林の中には人影はなく、落葉松《からまつ》だの糸杉だの山桜だの、栗の木だの槇の木だのが繁りに繁り、月光を遮ぎり月光を澪し、萱だの芒だのいら[#「いら」に傍点]草だのの
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