敵《かな》いませんや。向こうにゃア奥様という人質があって、こっちが無鉄砲に斬り込んで行きゃア、奥様に大怪我させるんですからねえ」とこれも大息吐いて呶鳴り立てた。
「ナニ家内が描虜にされた※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」とさすがの主馬之進も仰天したらしく、
「それは一大事うち捨ては置けない! ……方々お続き下されい!」と屋内へ夢中で駈け込んだ。
「では拙者も」と、それにつづいて覚兵衛が屋内に駈け込めば、
「それじゃアあっし[#「あっし」に傍点]ももう一度」と勘兵衛も意気込んで駈け込んだ。
(夫婦の情愛は別のものだな)と後に残った頼母は呟き、戸口から屋内を覗き込んだ。
(臆病者の主馬ではあるが、女房が敵の手に捕らえられたと聞くや、阿修羅のように飛び込んで行きおった。……ところで俺《わし》はどうしたものかな?)
頼母にとっては松女《まつじょ》の命などより、淀屋の財宝の方が大切なのであった。主税やあやめ[#「あやめ」に傍点]などを討ってとるより、独楽の秘密を解くことの方が、遥かに遥かに大切なのであった。
で、危険な屋内などへは、入って行く気にはなれないのであった。
太刀音、掛け声、悲
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