なのじゃ。そうして淀屋の財宝は、この荏原屋敷に隠されてあるのじゃ。淀屋の財宝の所在について、わしの知っているのは当然であろう」
「…………」
「おいで、お八重」と飛加藤の亜流は云って、館を巡って歩き出した。
「眼には眼をもって、歯には歯をもって……因果応報の恐ろしさを、若いお前に見せてあげよう」
お八重は飛加藤の亜流の後から、胸を踊らせながら従《つ》いて行った。
この頃館の裏口では、頼母と主馬之進とが不安そうに、破壊された戸口から屋内《なか》を覗きながら、聞こえてくる物音に耳を澄ましていた。
そこへ屋内から走り出して来たのは、飛田林覚兵衛《とんだばやしかくべえ》であった。
「大変なことになりましてございます。主税《ちから》めどうして手に入れましたものか、主馬之進《しゅめのしん》殿のご内儀を捕虜《とりこ》とし、左様人質といたしまして、その人質を盾となし、二階座敷に攻勢をとり、階段を上る我らの味方を、斬り落とし斬り落としいたしまする」
大息吐いて注進する後から、お喋舌《しゃべ》りの勘兵衛《かんべえ》が飛出して来て、
「坂本様も宇津木殿も、斬り仆されましてございます。とてもこいつア
前へ
次へ
全179ページ中162ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング