の消息《ようす》を知っているお葉が、居るかもしれない屋敷の構内から、不穏な物音の聞こえるということは、お八重にとっては心配であった。
(妾、屋敷内へ入って行ってみようか?)
 でもどこから入れるだろう? 土塀を乗り越したら入れるかもしれない。
 けれどそんなことをしているうちに、植木師の一隊は彼女を見捨て秩父山中へ行ってしまうにちがいない。
 現に彼女が思案に余って、土塀を眺めて佇んでいる間に、植木師の一隊は彼女から離れて、一町も先の方を歩いているのだから。……
(どうしよう? どうしたらよかろう?)
 地団太を踏みたい心持で、彼女は同じ所に立っていた。
 でも、間もなく彼女の姿が、土塀に上って行くのが見えた。
 恋人の消息が知れるかも知れない。――この魅力が荏原屋敷へ、彼女をとうとう引き入れたのであった。
 月光に照らされたお八重の姿が、閉扉《あけず》の館の前に現われたのは、それから間もなくのことであった。
 高い二階建ての館の二階へ、地上から梯子がかかってい、閉ざされている鎧のような雨戸が、一枚だけ開いている。そうして館の裏側と、館の屋内から人声や物音が、間断なく聞こえてくるようで
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