た男の怨恨《うらみ》が、十年もの間籠っているところの、ここはあけず[#「あけず」に傍点]の館であった。その館に持主の知れない薄赤い燈火の光が射して、あっちへ動きこっちへ移って、二人の男女を迷わせる! さては殺された先代の亡魂が、怨恨の執念から行なう業では? ……
こう思えば思われる。
これが二人を怯かしたのである。
「主税様|階下《した》へ降りましょう。……もう妾《わたし》はこんな所には……こんな恐ろしい所には! ……それよりいっそ[#「いっそ」に傍点]階下へ降りて、頼母たちと斬り合って、敵《かな》わぬまでも一太刀怨み、その上で死にましょう!」
あやめ[#「あやめ」に傍点]は前歯を鳴らしながら云った。
「うむ」と主税も呻くように云った。
「亡魂などにたぶらかされ、うろついて生恥さらすより、斬り死にしましょう、斬り死にしましょう」
階段の方へ足を向けた。
すると、又も朦朧と、例の薄赤い燈火の光が、廊下の方から射して釆た。
「あッ」
「又も、執念深い!」
今は主税は恐怖よりも、烈しい怒りに駆り立てられ、猛然と廊下へ突き進んだ。
その後からあやめ[#「あやめ」に傍点]も続いた。
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