へ現われた文字といえば『淀』『荏原屋敷』『有りて』『「飛加藤の亜流』という十五文字だし、以前《まえ》にわしの持っていた独楽へ現われた文字は、『屋の財宝は』『代々』『守護す』『見る日は南』の十五文字じゃ。……で、わしは先刻《さっき》からこの三十文字を、いろいろに考えて綴り合わせてみたが、こう綴るのが正しいらしい……ともかくも意味をなすよ『淀屋の財宝は代々荏原屋敷に有りて、飛加藤の亜流守護す』と、なるのだからの」
「飛加藤の亜流とは何でしょう?」
 主馬之進の妻の松女が訊いた。
 彼女はもう四十を過ごしていた。でも美貌は失われていなかった。大旗本以上の豪族であるところの、荏原屋敷の主婦としての貫禄、それも体に備わっていた。あやめ[#「あやめ」に傍点]やお葉の母親だけあって、品位なども人に立ち勝っていた。が、蝋燭の燈に照らされると、さすが小鼻の左右に深い陰影《かげ》などがつき、全体に窶れが窺われ、それに眼などもおちつか[#「おちつか」に傍点]ないで、なにか良心に咎められている。――そんなようなところが感じられた。
「飛加藤の亜流と申すのはな」と、頼母は松女を見い見い云った。
「白昼に龕燈をと
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