ことを、「水平の亭」と呼んで、遥かあなたに杉の木に囲まれた「閉扉《あけず》の館」などと共に、荏原屋敷の七不思議の中の、一つの不思議として数えられているのであった……
まだ解けぬ謎
「絶対に水平のあの卓の上で、淀屋の独楽をお廻しになったら、別の文字が現われはしますまいか」
ふと気がついたというように、深夜になって頼母へそう云ったのは、主馬之進の妻の松女であった。
「なるほど、それではやってみよう」
でも卓の上で廻しても、独楽の面へ現われる文字は、あれの他には何もなかった。
「駄目だのう」と頼母は云って、落胆したように顔を上げた。
「あれ以上に文字は現われないのであろうよ。……この独楽に現われたあれらの文字と、以前にわしの持っていた独楽へ現われた文字、それを一緒にして綴ってみようではないか。何らかの意味をなすかもしれない」
「それがよろしゅうございましょう」
こう云ったのは主馬之進であった。主馬之進は頼母の弟だけに、頼母にその容貌は酷似していたが、俳優などに見られるような、厭らしいまでの色気があって、婦人《おんな》の愛情を掻き立てるだけの、強い魅力を持っていた。
「この独楽
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