#「あやめ」に傍点]によって独楽の紐で、首を締められ一旦は死んだが、再び業強く生き返り、勘兵衛はその翌日からピンシャンしていた。
そうして今日は頼母のお供をし、頼母の弟の主馬之進《しゅめのしん》の家へ、――向こうに見える荏原屋敷へ来た。その途中で見かけたのが、野道での人だかりであった。そこで自分だけ引返して来て、群集に雑って魔法を見ていた。と、老人の小太い杖で、首根っ子をしたたか撲られた。息の止まりそうなその痛さ! 無我夢中で逃げて来ると、百姓家が立っていた。水でも貰おうと入り込んでみると、意外にも主税とあやめ[#「あやめ」に傍点]とが、艶な模様を描いているではないか。
淀屋の独楽さえ置いてある。
(凄いような獲物だ)と勘兵衛は思った。
(独楽を引っ攫って荏原屋敷へ駆けつけ、頼母様へ献上してやろう)
勘兵衛はこう心を定《き》めると、ソロリソロリと縁側の方へ、身をしずかに這い寄せて行った。
まだ痛む首根っ子を片手で抑え、別の片手を縁のふち[#「ふち」に傍点]へかけ、開いている障子の隙間から、部屋の中を窺っている勘兵衛の姿は、迫って来る宵闇の微光《うすびかり》の中で、まこと大きな蟇
前へ
次へ
全179ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング